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イベントレポートEVENT REPORT

熊本地震・薬剤師派遣活動(熊本県益城町にて)報告です・・・!

平成28年4月14日及び16日熊本県熊本地方及び阿蘇地方を震源とするマグニチュード7.3により熊本県内の広い範囲で震度6強を観測しました。現在も余震が頻繁に発生しており、被災地では倒壊した家屋の後片付けや生活道路の確保が重要になっており,1日も早い復旧・復興をお祈りしております。

被災地では震災によって多くの家や建物,車など被害にあっていますが、病院や薬局なども崩壊しており、地域医療が成り立っていない地区も多い様です。そういった中で、福岡県薬剤師会より4月16日に災害派遣薬剤師の支援依頼がありましたので、5年前の東日本大地震の支援活動の経験が少しでも役立てればと思い、今回第4班として参加することにしました。 平成28年4月20~21日の2日間の支援活動でしたが、時系列に報告します・・・☟

 

平成28年4月20日(水)
①7:00 福岡市薬剤師会会館集合。事務局より要項や行程など説明。コンビニにて食料,飲料水など購入。
②7:30 レンタカーにてOさん同乗,出発。福岡都市高速:千代IC → 九州自動車道:南関IC →  前班からのアドバイス参考にして渋滞避けようとナビ見ながら山道通るが、熊本市内は渋滞・・・
③11:30 熊本県薬剤師会会館到着。福岡県チーム(久留米,八幡,飯塚)と合流。事務局より震災被災状況,支援活動の要項説明。食料,飲料水,寝袋など 調達。
④12:30 熊本県薬剤師会出発 → 益城町総合体育館へ。  車中にて昼食。震災より道路封鎖箇所あり迂回しながら向かうが、益城町に近づくにつれ倒壊した家屋が増えてくる・・・ ほどんどの店、飲食店やコンビニ,病院,薬局などは営業しておらず・・・
⑤13:30 益城町総合体育館到着。 熊本県薬剤師会統括リーダー:大森さんより支援活動内容説明。前班より引継ぎ。

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○ 「益城町総合体育館」は、陸上競技場、テニスコート、武道場などがある総合施設ですが、現在は2000名ほどの被災者がおられるそうです・・・ 私たちは救護所テントにて、医療チーム(各医療団D-MATやJ-MAT,日赤チーム,国立病院機構チームなど)と被災者の診療に携わりました。

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⑥14:00~19:00 救護所テントにて支援活動。 

救護所内部:入って右側手前に患者受付,問診・カルテに氏名や住所など記載して、内科系か外科系などに患者振分け。左側手前に薬剤部。薬剤棚や分包機,OTCコーナーなど。 右側奥に診察室3診。簡単な仕切りのみ。 左側奥に診察用ベット2個。

○医師診察~薬剤師投薬までの流れ:医師診察時に患者さんの後ろに薬剤師がピタっとついて、医師と患者さんの話を聞くなかで状況に応じて(採用薬や在庫薬,同種同効薬,ジェネリック薬など・・・)、医師,患者さんに助言して処方設計に携わります。既往歴,併用薬などは医師が診察時に聴取しています・・・
○診察が終わると「カルテ・簡易診療録」を医師より預かり調剤を行います。おくすり手帳と薬袋(災害用緊急)に「調剤日,薬剤名,用法用量,薬効(簡単に),場所(益城町総合体育館),薬剤師名」を手書き記載します。服薬指導は診察同行した薬剤師が行うので、すぐに的確な服薬指導が行えます。症状やご要望に応じてOTC(一般用医薬品)の無料配布などを行います。
○時間帯にもよりますが、6~8名の薬剤師が調剤,投薬など分担して携わりましたが、私は主に投薬担当で2日間で30~40名ほど服薬指導を行いました。服薬指導時には、被災時の状況,避難所の暮らし,今後の先行き不安なことなどもいろいろとお話しすることもありました・・・

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○熊本薬剤師会が用意している薬剤は当初200~300品目でしたが、各医療チームが持参している薬剤ボックス(ジュラルミンケース)も使用しています。基本的には薬剤師会の薬剤を使用しますが、在庫がない場合は各医療チームの薬剤を使用していました。但し医療チームは1~2日おきに代わることが多いので、その都度各薬剤ボックスも代わるので覚えるのが大変でした・・・ なので、今後のことを考えて急ぎでなければ、卸さんに多目に発注するようにリーダーより指示を受けていましたので、どんどん発注していました・・・ 発注した薬が救護所に届くのは、薬にもよりますが大凡2~3時間後には届いていました。

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⑦15:00~16:00 ノロウイルス感染が発生する可能性があるとのことで、消毒のため「次亜塩素酸水0.1%」を調製して、トイレ消毒や被災者の方がおられる体育館や通路消毒に設置しました。
ノロウイルスは感染すると、24~48時間ほどの潜伏期間を経て感染症や食中毒を発症すると言われ、感染すると下痢だけでなく激しい嘔吐を引き起こすのが特徴です。特に感染した子どもの世話や看病をした人が吐しゃ物などを介して二次感染するケースも多く、適切に処理して消毒を行わないと感染を広めてしまう危険性があります・・・

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⑧16:30~17:00 医療チームの合同ミーティング(初顔合わせ)
益城町は被災被害も大きく報道もよくされていることもあり、医療チーム,各ボアンティアの方が多くいましたが、その統率,指揮,今後の運営のため、こういった合同ミーティングを密に行って連携を図る必要があります。
 ☟各団体のリーダーが数分ずつ挨拶され、明日もこの時間に集合してミーティングすることになりました。

○益城町町長、益城町総務企画課長、上益城群医師会長、熊本県医療災害チーム、J-MAT、D-MAT、日赤チーム、国立病院機構チーム、薬剤師会、保健師、摂食サポート、J-RAT災害リハビリ、陸上自衛隊・・・

 その後、薬剤師チームのみでミーティングを行いました。☟

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⑨19:00~21:30  「エコノミークラス症候群」注意喚起作戦・・・!
○車や避難所で長時間同じ姿勢で過ごすことで血の塊ができ、血管が詰まる「エコノミークラス症候群」を発症する人が相次ぎ、救護所や病院に搬送される方も多く、被災者の中で亡くなられる方も出ている状況です・・・ 発症する人は女性が多く、車中泊をしている、トイレを我慢するために水分を十分にとらない人が多い、などの特徴がみられ、
長時間同じ(特に車中等での窮屈な)姿勢でいないように、時々運動をしたり散歩をしたりすることが大切です。

○「エコノミークラス症候群」を少しでも減らすため、薬剤師を7班(1チーム2~4名)に分けて、体育館や通路,車中などの被災者の方に、「避難されている皆様へ:エコノミークラス症候群に注意!」パンフレットを配布しながら、足の痛みや浮腫みなどの症状をお尋ねして、適度な運動や散歩,こまめな水分補給などで予防法などについてお話しして、思い当たる症状がある場合には救護所での診察勧奨や同行することもあった。 OS-1やミネラルウォーターを数十本持参しており、水分摂取不十分の方にはその場でお渡ししました。
○私たちは4人チームで、1~2階の通路全ての被災者の方(だいたい家族単位ごとに)と、日も暮れて暗くなったなか駐車場に停めてあるクルマに寝泊まりするかなと思われる方にもどんどん声掛けを行いました。「エコノミークラス症候群」については、避難所にて配布されている新聞に大きく報道されていることもありほとんどの方がご存知でしたが、薬剤師がわざわざ来てくれたと感謝され、快く話に応じていただくことが多く、2時間半くらいの間に私たちは200名を超える被災者の方に声掛けを行ったと思います・・・

⑩21:30~22:30 薬剤師集合ミーティング(暗闇のテント内で・・・)
 「エコノミークラス症候群」注意喚起作戦の状況,結果報告を一人ずつ行いました。
集計の結果、私たちが声掛けを行うことで、少なくとも13名(女性9名,男性4名)の方が 「エコノミークラス症候群」かもしれないとのことで救護所に受診しました・・・!

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 ○「エコノミークラス症候群」と診断されると弾性ストッキングを履く処置をされることもあり、今回救護所では数種のサイズの弾性ストッキングを多目に仕入れており、実際に看護師さんに履かせてもらうこともありました ☟ 結構キツめで、看護師さんも結構ご苦労の様子でした・・・
 ○着圧・弾性ストッキングは、足を適度な圧力で圧迫するため、筋ポンプ作用を強くしたり、むくみの原因である血管からの血液の染み出しを少なくするため、むくみの予防に効果があることがわかっています。 弾性ストッキングのむくみ予防効果は確かですが、足がむくむ前に履くことが望ましく、もしむくんでしまった状態で弾性ストッキングを履く場合は、10分間でも足上げ等でむくみを和らげてから履くとよいと言われています。

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★衣食住について・・・

⑪23:00~23:30 ようやく夕食・・・
○今回初めの引継ぎ時にリーダーより「適当に休憩して食事摂ってください・・・」とのことでしたが、震災数日後で体制が整っておらず,赴任初日で仕事の流れがはっきり分からず,仕事は次々とあったため、薬剤師皆さんこの時間の食事になりました・・・
持参したパンやおにぎり,カップラーメンなどをそれぞれ美味しくいただきました・・・☺
○昼より休憩はほぼトイレのみで、脱水にならないようにペットボトル携帯して水分摂取だけはしていました・・・
○ 電気,電話は問題なし。上下水道・ガスは不通。トイレは簡易トイレが多数あり、蓋があり汚物は足踏ポンプで少量の水で流れる・・・ ボランティアの方が定期的に清掃していただいており臭いもそこまでなく比較的キレイです・・・
○お風呂:お風呂に入れない方々に向けた自衛隊の「仮説風呂」が設置されています。もちろん男女別で、夕方以降は多くの方が並んで大人気です! 私たち災害支援スタッフやボランティアの方はもちろん利用しません・・・
○炊き出し:ボランティア(YMCAなど)の方が朝昼夕行っており、多くの方が並んでいます・・・

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★仮眠,当直勤務,朝食タイム
○救護所当直は、3交代制・3時間勤務(①21-0時,②0-3時,③3-6時)で各4名ずつで、当直時間以外の方は仮眠タイムの予定でしたが、エコノミークラス症候群注意喚起作戦と薬剤師ミーティングが23時過ぎまで長引いたため、仮眠タイムが短めに・・・
平成28年4月21日(木)
0~3時
 仮眠タイム(車中にて)
私の当直勤務は ③3-6時になっており、薬剤師ミーティング及び夕食の後に休憩に入らせてもらいました。
仮眠スペースは、体育館の入口付近やテント内に寝袋が用意されていましたが、仮眠時間が2~3時間だったので私はマイレンタカー内にて仮眠タイムを取りました。エコノミークラス症候群にならないように注意して・・・
⑬3~6時 救護所にて当直勤務
薬剤師4名で勤務したが、雨が激しく降り出したこともあり患者さんは少なかった・・・
⑭6~7時 朝食 
ほかの薬剤師も起床してくるなか、朝食(持参したパンなど)を交代で摂りました

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⑮7:00~7:30  全体ミーティング (総合体育館入口事務所にて)
☟ 各組織の責任者が集合して、前日までの活動報告,連絡事項,要望事項など・・・
○出席者:全体統括者、町役場、ボランティア、物資、炊き出し、渉外、日赤チーム、国立病院機構チーム、薬剤師など・・・
○内容:徘徊者,蚊の発生,ペット同伴,ペットアレルギー報告,雨天時転倒予防,不審者,郵便物配布,学校再開の目途,CO2換気,道路復旧状況,病院や薬局など近隣医療機関の再開 など・・・様々なことが報告されていました。
薬剤師リーダーからは、昨晩のエコノミークラス症候群の活動報告やノロウイルス感染予防活動などについて報告していました。

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⑯7:30~14:00
救護所テントにて支援活動。 炊き出し配給のお昼の時間帯以は、患者さんがずっと途絶えることなく多忙でした・・・
医師や薬剤師,看護師など医療チーム一丸になって、被災者の方の身体と心のケアを精一杯行いました・・・

⑰和歌山県薬剤師会より「モバイルファーマシー」が派遣されていたので、お願いして乗車させていただき内容説明をしていただきました。
○「モバイルファーマシー」とは、薬局機能を搭載した機動力のある災害対策医薬品供給車両で、ライフラインが寸断され薬局も機能を停止して医薬品の供給体制が滞るような大規模災害に見舞われた被災地に出動して、医療用医薬品を必要とする被災者の方々に自立的に災害対策用の医薬品を調剤して提供することができる体制を整備することが目的とされています。
○現在、和歌山県のほか宮城県,広島県,大分県などが導入しており、約1,200万円ほどの導入経費とのことです・・・
○主関連設備:
電子天秤、散剤自動分包機、錠剤棚(300~500品目収納)、引き出し付き台カウンター、水剤調剤用シンク・蛇口、清水タンク、排水タンク、保冷庫(90ℓ )、L型作業台、情報処理コンピュータ・プリンター用事務机、洗面台、カセット式水洗トイレ、温水シャワールーム、ベッド(2名)、給水タンク(64ℓ)、給水ポンプ、温水設備(24ℓ)など・・・

○今回、和歌山薬剤師会の方3名で来られていましたが、導入後初めて使用したとのこと! 大阪南港より門司港行フェリーに乗船して来られたそうです・・・ 
○ただし、ここ益城町総合体育館救護所は医療設備や医師・薬剤師なども揃っているため、モバイルファーマシー」は必要ないだろうとのことで、
昼過ぎに「南阿蘇」の救護所に向かわれました・・・ 大雨が降っており土砂災害も懸念されるなか、注意して支援活動を・・・

 

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⑱14:00~15:00 次班に引継ぎ
⑲15:00~16:00 益城町総合体育館~熊本県薬剤師会 
事務局に活動報告,昼食・・・
⑳16:30~19:00 熊本県薬剤師会~ 帰路に就く・・・ 
「益城熊本空港IC」(災害派遣等従事車両証明書より)~「大宰府IC」福岡都市高速経由にて、福岡市薬剤師会に到着・・・

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○非日常の緊張感,初めての環境下での調剤業務(慣れた頃にもう引継ぎ・・・),当直あり睡眠が十分でないこと,上下水道不通で手洗い,トイレ,風呂が不十分で衛生面で問題あること,余震が続く被災地であるということ,日常薬局業務に穴を空けていることなど考えると長期滞在は難しいですが、終わってみればあっという間で「薬剤師として,人として」求められてやりがいを感じることが多かった2日間であり、現地でもっと活動できればと感じました・・・
○九州各地や全国様々な薬剤師や医師団と特殊な状況下で密に衣食住24時間一緒に仕事するなかで、皆さんモチベーションが高く勉強になることも多く、日常の薬局業務にはない経験ができて視野が広がったと思います。
○人として,薬剤師として何かできることはないのか,どうしたらいいのかを自問自答する日々ですが、私が見てきたもの,感じたものを周りのひとにお話しする機会を設けたり,HPにアップすることで、風化させることなく 少しでも多くの方に伝えてることができたらと思っております!